INTRODCUTION

1962年、小林悟監督『肉体の市場』(大蔵映画配給)が警視庁に猥褻容疑で摘発される。以後、独立系会社による低予算の成人向け映画が<ピンク映画>と称され、斜陽にあった日本映画界を立て直す大きな産業として急成長する。そして、反社会、反体制といったメッセージ性を掲げた若松孝二のアヴァンギャルドな作品群を筆頭に、若者からの熱狂的な支持を集め、メジャーの日本映画とは違ったパワーと魅力で映画的な評価も高まる。
渡辺護、中村幻児、高橋伴明、井筒和幸、滝田洋二郎、廣木隆一、周防正行、黒沢清、瀬々敬久、いまおかしんじなどが監督デビューし、若手作家が巣立つ場所としても、大きな役割を担う。また、白川和子、宮下順子、大杉漣など、ピンク映画を起点として成長を遂げた俳優も少なくない。
製作本数、専門館も減少し、現在のピンク映画が末期的な状況であることは否めないが、日本映画に唯一残されたプログラム・ピクチャーとして、作家性、娯楽性に富んだ良質な作品が生み出されていることは不変である。
ピンク映画半世紀の歴史は、紛れもなく日本映画を活性化させた大きな存在であり、ポルノというブランドに隠された「もう一つの日本映画史」である。
他で観ることのできない貴重な旧作を含め、その歴史を辿る特集上映を長期に渡り開催します。